VOL / PEOPLE 001

HIROKI OHKAWA

スカル鉄瓶をつくる人:大川寛樹

長きに渡って岩手で受け継がれてきた伝統工芸、南部鉄器。時代の流れとともに、様々な製品が産み出され、日本全国から世界までその魅力が渡り愛されるようになった。その昔、祝い事の品として重宝されてきた南部鉄器には、縁起ものとされる模様や造形が多く作られてきた。そんななか、日本の文化の中ではまったく真逆とされるシンボルを施した鉄瓶が、奥州市羽田の地で産み出された。それが、スカル鉄瓶である。多くのデザインやアートの中で、ファッショナブルな扱いとして取り入れられるようになったスカルのモチーフを、伝統工芸である南部鉄器に施し、 まったく新しい文化のはじまりさえ感じさせる作品へと昇華した。手がけたのは、南部宝生堂 株式会社 及富の南部鉄器職人 大川寛樹さん。彼の様々なカルチャーに興味を持ち携ってきた背景と、あらゆる発想を前に押し出す及富だからこそ生まれた作品である。伝統を超え、さらにその先へ進もうとする姿を捉えるべく密着取材させてもらうことになった。

さも静かに、さも騒がしく、黙々とした活気と熱と魂が溢れる、及富の鋳造現場。炉に火があがり、鉄が溶け出す。独特な鋳物の匂いが立ち込める。肌寒くなる頃だった。鋳造が始まると熱気と砂型から溢れる蒸気で包まれていた。型をつくり、鉄を流し、鉄器を産み出す。その現場に彼の姿があった。

砂型から掘り起こされる生まれたての鉄瓶。余分な箇所が残ったままの荒々しいかたちと、まだ熱を含み赤みを残す鉄の温度感。生きた鉄を静まらせ、鉄に新しい命を与えるかのような、そんな手さばきと作業行程だった。研磨され、塗装が成され、普段目にする鉄器の姿が誕生する。黙々と行われるその作業工程の中にいながらも、この鉄と結びつく新しい発想を探し続けているようだった。

Location:株式会社 及富(奥州市)

奥州市水沢にあるJAZZRIZE STORE。株式会社 及富のWEBサイトを手がける株式会社 JAZZRIZE DESIGNの代表でありデザイナーの梅田浩司さんとの製品プロモーションについての打ち合わせに同行した。美味しいコーヒーを飲みつつ話をする大川さん。彼の手がけた鉄皿を見て、ふとドライフラ ワーを置いてみる梅田さんの感性。つくる人と活かす人とのコミュニケー ションを垣間見た瞬間である。製品をいかにユーザーへ届けるか、アイデアと信頼でつくりあげるタッグワークだ。

Location:JAZZRIZE STORE(奥州市)
Drink:オリジナルブレンド

とある休日、二人で足を運んだのは遠野市にあるNōTO GENERAL STORE。north production Inc.代表の松田成人さんが営むお店である。アパレルブランド 『N-S』の服づくりをしている松田さんが、これから扱おうと考えている遠野産の鹿の革。この革と南部鉄器のコラボレーションができないかという話に始まり、その他様々なカルチャーの部分でも会話は尽きず、お店の雰囲気、美味しい食事も相まってついつい長居してしまった。伝統工芸と地元に眠る資源との融合、その可能性を模索していた。

Location:NōTO GENERAL STORE(遠野市)
革:染め加工を施した鹿の革
Stock room:カフェと併設されたアパレルグッズ等のショップスペース
Food:ガパオライス
豆:自家焙煎のコーヒー豆

奥州市某所にある愛宕神社。インスピレーションとパワーをもらいに、ときおり時間をみつけてここを訪れるとのこと。秋も終わりが近づいた頃、あたり一面が落ち葉で埋まっていた。踏みしめる落ち葉の絨毯もまた、ひとつのインスピレーションとなり、落ち葉は鉄皿のテクスチャーへと姿を変えていた。彼を通してあらゆるものが融合し、新しい作品として産み出される。伝統のその先をとても楽しんでいるように見えた。

大川寛樹
1986年、奥州市水沢出身。東京下北沢MORE、東京青山なるきよ、水沢音酔処 BUGPIPEを経て、2017年及富に入社。2019年元旦,静岡まで行って引いたおみくじは凶 (笑)。 あとは上がるだけ!
取材:FOLKJOE 八重樫裕己

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